子どもと親のためのコミュニティ広場

棚橋 理亜
母の果てない夢の果て…
棚橋 理亜(36) 兵庫県川西市

 我家の一人息子は「(りょう)」という。
 お腹の中の赤ちゃんが男の子だと判明した日から、私は様々な名前を考えていた。
 響きがきれいである、外国の人も呼び易い、「ちゃん」「君」「さん」どれを続けても違和 感がない等、私の独断に満ちた妄想はとどまるところを知らぬ状態だった。
 一方、夫はと言うと、「顔を見るまではイメージが湧かん」と考えている様子は全くない。 よって私ひとりの妄想は更に暴走し続けることとなった。アイドルになった時、本名のま まで通用する名前がいい、とまで思っていた。果てしなく広がっていた妄想ワールドに、 ある日ひとつの「条件」が付けられた。
 夫の母に、「棚橋家の男性の名前は漢字一文字」だと言われたのだ。確かに、夫は(あきら)、夫の父は(さとし) 、義父の兄弟も(ゆたか)(あつし) である。
 以降は「命名辞典」なるものを片手に悩むこととなった。それでもピンとくる名前を考 えつかないまま、とうとう息子は生まれてきてしまった。生まれたての息子を抱いた瞬間、 甘い思いは全て飛んで行った。だって息子はどう見ても夫の縮小コピーだったから。
 外国のように「朗Jr.」にしたかった程だ。
 国際派ともアイドルともほど遠い。
 生まれる前よりもっと悩むこととなった。
 顔を見るまでは、と言っていた夫も、顔を見ても思い浮かばず、苦しまぎれに提案した のが「ジョン」。犬やないねんから!!と皆につっこまれ「国際的やないか」と小声で反論。
 あれこれ大騒ぎした挙句、呼び易い・一文字ということで「凌」と決まったのは、役所 に届ける期限の前夜だった。
 届を出してホッとした私に弟が言った。  「姉ちゃん、外国人ってな、りゃ・りゅ・りょの発音が苦手やねんぞ」
 弟よ、もっと早く言っておくれ…。
 今、インターナショナルスクールに通う息子は、先生に「ロウ」と呼ばれている…。


前のページへ戻る