子どもと親のためのコミュニティ広場
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私の息子の名前は「夏海」という。人に名前を教えると、たいてい「夏生まれですか?」
と聞かれる。ええ、そうです、でも二月なんですけど。
日本が真冬の二月、南半球のニュージーランドはちょうど夏の盛りである。妊娠してい
た当時、私はニュージーランドに語学留学していた。フリーターだった私は、妊娠ととも
に職を失い、再就職に悩むよりも、なけなしの貯金をはたいて昔からのあこがれだった海
外留学をしてみることにしたのだ。
妊婦の私は、自分でも想像以上にタフで、ちゃんと授業もこなし、久々の学生生活を楽
しんでいた。オークランドは自然にあふれた美しい都市で、毎日何時間も散歩を楽しみ、
私は出産への体力を蓄えていた。
そして出産予定日がせまった二日前、悠長に構えていた私もさすがにあたふたとおむつ
やベビー服を購入し、アパートのシェアメイトにいろいろ助言してもらってその日に備え
たのだった。
陣痛が始まったのは、きっちり予定日の朝。そして半日間、友達や若い青い目の助産師
に支えられての「産みの苦しみ」をなんとか乗り越えた。
やっと対面した小さな息子を、私はすぐにお腹にのせ、胎盤の血流が空になるまでゆっ
くり待って、自分でへその緒を切ったのだった。
翌朝も、オークランドの町はからっと晴れて、いい天気だった。穏やかな風の中、遠く
に海がきらきら見える。日本からは遙かに遠いが、世界各地につながっている海。眠り続
ける、白いドレスに包まれた息子を膝に抱いて、私は腕をのばして叫びたいような、心を
とばしてどこにでもいけるような気分でいた。そんな素敵な季節に生まれ、私にたくさん
の冒険をくれた息子に、すばらしいこの季節と広がった海の呼び名をプレゼントしようと
決めた。
「夏生まれですか?」と聞かれるたびに、
「実は……」と答える私なのだった。
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